アメイジング・グレイスはどこの民謡か
最近ではドラマ「白い巨塔」のエンディング等で使われていた美しい曲ですが、インターネットで調べてみると
- アメリカ民謡
- イギリス民謡
- スコットランド民謡
と、3つの記述に分かれていることを発見しました。スコットランドは1707年にイギリスに合併しているのですが「イギリス」は便宜上の名称なのでイギリス民謡というものがそもそも存在しない気がします。というわけでイギリス民謡はスコットランド民謡に包含することにします。
そうするとアメリカとスコットランドの差は何でしょうか?ちょっと調べてみました。
アメイジング・グレイスはそもそも賛美歌第2編167番で、作詞者はイギリス人のジョン・ニュートン(1725-1807)というクリスチャンです。
彼は以前、荒くれ者の奴隷商人でした。しかし奴隷貿易船で遭遇した大嵐で死に直面した時、初めて「神様、助けてください!」と叫んだのです。幸いにも命は助かり、その後彼は7才のときに亡くなった母が残してくれた聖書を読み始め、クリスチャンとなったのです。そして嵐の体験を元に「こんな愚かな、どうしようもない者をも神は救って下さった」という恵みを歌ったのがこの讃美歌です。
その後イギリス人のアメリカ移住とともに、この歌はアメリカの黒人奴隷、そして奴隷解放による黒人の北部移動に伴いアメリカ全土、さらに世界へと歌い継がれたようです。
どうやら作詞は間違いなくイギリス人のようですが、作曲者(不詳)がどこの国であるかは明らかでありません。「黒人奴隷達により歌われていた一種の労働歌"Loving Lambs"と合体した時から人々の間に広がり始めた」という説や、または「移住者がスコットランド民謡を歌い継いだ」という説等、さまざまです。ギターアンサンブルの楽譜には「Scottish Folksong」と書かれているものもありますが信憑性は定かでありません。
これで話が終わると締まりがないので少し音楽的に分析します。スコットランド民謡の特徴は5音音階です。これは「四七(ヨナ)抜き」というもので、メジャースケールの半音階にあたる第4音と第7音を抜いたものです(ポピュラー用語では「ペンタトニックスケール」)。これは「スコットランド音階」とも言われており「蛍の光」が有名ではないでしょうか。アメイジング・グレイスはまさにこのスコットランド音階に当てはまるのです。
という訳でアメイジング・グレイスのメロディーはあながちスコットランド民謡ではないとも言い切れないようです。まあ移住民はイギリス人だった訳ですから、スコットランド民謡とジョン・ニュートンの歌詞が海を渡ってアメリカの地で融合したという可能性は否定できません。
「アメリカ民謡」という印象が強いのは黒人霊歌という歴史的背景からだと思いますし、黒人が作曲したのであれば異なったメロディーが付される気がします。いかがでしょうか。
ピッチパイプ
フォークギターを弾き始めた中学生の頃、音叉の存在を知らなかった私は「ピッチパイプ(調子笛)」なるものを買って使ってました。ギター用のピッチパイプは各弦の音程に合わせた6つの笛が横並びにくっついていて、それを吹くとハーモニカみたいな音で「プー」という、なんとも素朴で懐かしい感じの音が出てきます。安物だったのか途中でどれかひとつ音が出なくなったことも覚えています。
が、その音と弦の音を合わせるのはなかなか難しく、当時まともに調弦ができていたかどうかは定かではありません。音叉は使い慣れるまで時間がかかるかも知れませんが、ピッチが狂っている状態からピタリと合わせる時の爽快感は、ピッチパイプは遠く及びません。やはりこれはそこから出る音色、つまり倍音の問題なんでしょうか?
マンドリン団体では昨今チューナー(から出る音)でチューニングをする団体が増えてきましたが、私はその音色から昔使っていたピッチパイプの「プー」という音を想い出すのです。